開業実例

成功者インタビュー

Concept

あえて目立たず宣伝もせず
隠れ家イタリアンシェフの逆転の飲食店経営術

Sel Sal Sale(セルサルサーレ)

オーナーシェフ 濱口昌大 さん

1979年大阪府生まれ。「Ristrante Luxor」、「En condition」などの都内有名イタリアン・フレンチレストランで修行後、東京と全国の農家の繋がりをコンセプトとしたレストラン「六本木農園」シェフに就任。2010年よりイタリア・プーリア州に渡り「Ristorante Sotto l’Arco」で修行。欧州10カ国を周遊し、各地の食文化を学ぶ。帰国後、大手飲食会社総料理長を経て、14年3月、池尻大橋に「Sel Sal Sale」オープン。産直新鮮素材を用いた趣向に富んだ料理の数々は、常に顧客の想像を上回ると口コミ中心に絶大な評価を得ている。食の専門学校「レコールバンタン」講師としても活躍中。

★ Sel Sal Sale(セルサルサーレ)★


住所:世田谷区池尻1-11-8 和光ハイム池尻 1F
TEL:03-3413-0699
営業時間:金~日・祝 12:00~15:00(LO14:00)(※休みの場合があるので要問い合わせ)
火~日・祝 18:30〜23:30(LO21:30)
定休日:月曜(月曜が祝日の際は火曜)
店舗情報【 HP Facebook 食べログ Retty 】
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渋谷お膝元の隠れ家エリア・池尻
駅遠くの目立たぬ場所に「あえて」構える人気イタリアン店

セルサルサーレ001

世田谷区池尻は、東急田園都市線で渋谷から1駅(池尻大橋駅)。旧駒沢練兵場の跡地に戦後、世田谷公園、学校施設、自衛隊駐屯地などが造られ、その周りを官舎や住宅街が囲む静かな街だ。渋谷の喧噪を避けてのんびりとお酒や食事を楽しみたい人々が足を向けるお忍びエリアでもある。

今回伺ったイタリアンレストラン「Sel Sal Sale(セルサルサーレ)」は、そんな池尻にある隠れ家レストランの筆頭といえる存在だ。池尻大橋駅から国道246号線を三軒茶屋方面に徒歩10分、三宿交差点を左折して池尻小学校すぐ近くにあるこの店は、通りからかなり奥まった場所に存する。表には何の目印もない。何も知らなければ、ここがレストランだと気づかずに通り過ぎてしまう人も多いだろう。

しかし、実はこの店、有名グルメサイトでもランキング上位の人気店。厳選された60種以上のワインと、全国各地から直送される山海の新鮮素材による独創的なコース料理を提供し、エリア内外から数多くの常連客が集まる。「あえて目立たない立地を狙った」。世間の風潮とは真逆を行くオーナーシェフ・濱口昌大さんの経営手法には、飲食店開業で成功するためのヒントが沢山詰まっている。

欧州各地をめぐっての綺羅星のような料理人経験
不便な立地を選んだその訳は?

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濱口さんはイタリアン料理に魅せられ、静岡、東京で三ツ星含む有名イタリアン、フレンチ料理店で修行。その後、現在では自身が講師を務める食の専門学校で飲食店開業・経営について学び、“東京と全国の農家を繋ぐ“ことを目的としたコンセプトレストラン「六本木農園」シェフに就任した。2010年からはイタリアに渡り、現地リストランテの厨房で修行。欧州10カ国を歴訪して各地の食文化を学ぶという綺羅星のような飲食業歴を持つ。帰国後は、大手飲食会社総料理長として店舗開発を担当しながら、2013年から本格的に独立開業の準備を開始した。

普通、飲食店開業のための物件探しというと、駅近、路面店、視認性良好のいわゆる「好立地」を皆求めるものだ。しかし、濱口さんは、ABC店舗で見つけた、駅から遠く、通りからも分かりにくい、一般には敬遠されるかもしれない池尻のこの物件を選んだ。「というのも、僕が造りたかったのは、周りに他に寄るところがなく、“この店に来ることだけが目的”という店。ここはぴったりだった」。知人全員が反対したが、濱口さんの意志は固かった。

前店舗はビストロ店。改装時には譲渡造作を活用しながら、一貫して「何をやっているか分からない」という雰囲気を演出した。木目調のナチュラルな店頭には看板を一切つけず、よくよく見ると壁に「sel sal sale」と店名を刻した鋳物と、簡素な紙のメニュー表が貼ってあるだけ。内装も元々あったテーブルを自分で張り替えて、チープ感を出している。これは、豊富な飲食経験から繰り出されるハイレベルな料理との良い意味でのギャップ感を狙っての意識的な仕掛けだ。

フランス・イタリアン・スペイン語―3つの「塩」に込めた想い
サプライズに溢れた妥協しない料理で期待以上の感動を

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「Sel Sal Sale」という店名には、濱口さんの料理コンセプトが表されている。Selはフランス語、Salはスペイン語、Saleはイタリア語でそれぞれ「塩」の意味。「僕が身に付けてきたイタリアン、フレンチ、スペインの各料理手法を使い、塩と食材の相性から美味しい料理を考えていく。それがこの店のコンセプトです」。何十種類と揃える自然塩は、含有ミネラルによって、味わいや舌への残り方が全く変わる。「例えば、マグネシウムが多い塩は苦味があり、マグロやサンマなど鉄分が多い食材と合わせると嫌味なく血の苦さを消してくれる。そういう“どうでもいい小さいこと”を200、300と重ねていくと、全然どうでもよくない料理になる」。妥協しないで塩からちゃんと考えよう。一見ユニークで愉快な語感の店名には濱口さんのそんな決意が込められている。

魚・肉・野菜といった素材類は、主に、「六本木農園」シェフ時代に知り合った全国の生産者たちから直接仕入れ、ディナーコース10品5,000円という抜群のコストパフォーマンスを実現している。さらに、客の誰もが感動するのが、実際に来店すると、15品、16品とあらかじめ伝えられていた品数を上回る料理が次々にテーブルに提供されることだ。「期待値を下回る店が多過ぎると思うんです。何これ、面白い、楽しい!そういうサプライズ感で想像を超えないともう一度は来ない。常にお客様の期待値を上回るサービスの提供に努めています」。

実はオープン当初は、同じコースをさらに低料金の3,000円で提供していた。2年間は赤字の事業計画を、ここでも「あえて」立てたという。「赤字覚悟の低料金から始め、消費税やサービス料の付加、500円ずつの価格アップなど、少しずつ価格を上げていく。すると、“あそこは安くて美味い”から“安い”が消えて、“あそこは美味い”だけが残るんです」。この経営戦略は、元日本マクドナルド社長の原田泳幸氏の手法から学んだ。

「どのタイミングで何を提案するか」を経営的目線で見極めることも大切だという。「例えば、うちだと、食後のコーヒー・紅茶は別料金。また、今日のメインは鶏だけど+800円で鹿に替えられますとか、こういったことも、食前ではなく、料理を食べてめちゃ美味しいと思ってもらえたタイミングで言えば、受け入れてくれる可能性が高い」。こうした“勘どころ”を磨くことで、初来店のお客様の緊張をほぐして笑顔になってもらうには、いつ、どんなことをすればいいのかも分かってくるという。「ただ食べるだけならファミレスでもいい。ここでしか得られない体験を提供したい」。

飲食店開業は100ではなく20を目指す
今あるものでもっと出来ることが沢山ある

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店の客層は30~60代で、そのうち住民は2割ほど。大部分の客はエリア外からやって来る。主な集客方法は口コミ。オープン当初から積極的な宣伝は一切せず、長く続く右肩上がりの成長を目指す。「不便な立地なので、いかにもう1度来てもらえるか、それしか考えていません。毎日満席というよりは、2,000名の常連さんを獲得することに焦点を絞っています。全16席、年間300日稼働で考えるとそれ位の人数で、結果的には自動的にちょうど毎日満席となる。そのためには、払う対価以上の楽しさを味わって頂くことに尽きます」。

これから飲食店開業を志す方々へはこう語る。「最初から100を目指さないで、20くらいを目指す。飲食店は2年間くらいかけてやっと形になる。僕もやっと65くらいに到達したかなというところ。開けてみたら要らなかったという設備も多い。自分も準備中は100を目指してしまっていたが、友人に“これ本当に要るの?どっかで妥協しようよ”と言ってもらえて見直すことができました」。完璧主義は息切れの原因になる。開店後の運転資金も見据えて、余裕のある開業計画を立てたい。

今後も、当面はこの店を大切に育てていくつもりだ。「“うちスゴイぜ”みたいに言うのは嫌い。過信したら終わり。自分で自分の可能性を消してしまう。自分もまだこの店でもっと出来ることがあると思う。例えば、店が狭いから、と諦めてしまっていることはないか?小さい店だからこそできる、人との密な関わりがあるのではないか?その一つの試みとして、表のテラスで産直野菜や不要食器を通行人に販売することも。そこから会話が始まり、来てもらえるきっかけになったりする。年内はそういう面白い感じでやっていきたい」。

自分に慢心せず、今あるものを最大限活用して、より良いものを生み出す。濱口さんの真摯な姿勢には、あらゆる業態で応用可能な不変の飲食店成功法則が体現されている。
(取材日:2016年9月27日(火))

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